個客代理人2--もう広告もプロモーションもいらない?


■行列のできるバーガーショップ


マックで行列と言えば、2008年暮れのクォーターパウンダー発売の際に、大阪でサクラを使って行列を演出したという事件があった(マクドナルドはこのとき自身が持つ一日当たり店舗売上の最高記録を更新したのだった)。


ネットの世論調査でこれに対する反応を見てみると(livedoor世論調査「マクドナルドの”アルバイト”動員、どう思う?」)、「不適切」が3分の2、「適切」が3分の1。問題はその理由だ。「不適切」とした人は「虚偽」「やらせ」を問題にし、「適切」とした人は「マーケティングの一手法として当然」「やらせもマーケティングのうち」と回答している。論点は「やらせ」や「虚偽」を許容するか、という点にあって、賛成論も反対論も「新商品に行列は当たり前」と捉えているようだ。


そこにあるのは「マーケティングの成功」=「行列ができること」という図式ではないか。そして、そこにないのは顧客本位の視点だ。顧客本位で考えるならば、客を待たせるということが成功の指標であるはずがないからだ。
子供向けのキャンペーンが行われるたび、週末のマックは大混雑となる。単純にハンバーガーを食べるためにマックを訪れる客にとっては迷惑以外の何ものでもない。問題はそこに業態としての問題意識があるかどうかではないだろうか。時間帯によって混雑が発生するのはある程度仕方がない。しかしその混雑を(キャンペーンによって)人為的に作り出すこと、さらには(サクラを使うことによって)混雑を意図的に増幅すること、そこに顧客視点がないということが問題なのだ。


「いかに客を待たせないか」という観点からオペレーションを組み立てることはできないのだろうか。それこそがそもそもファストフードという業態の出発点ではなかったのだろうか。
顧客志向で組み立てられたはずのプラットフォームを、いつのまにかオペレーションが裏切ってしまっているように見える。